ポール・ジェムキェヴィチ博士をご紹介します。彼はペンシルバニア州の西部で育ちました。子供の頃、彼は、酸性鉱山排水が原因で生き物がいない地元の河川や小川をきれいにするという夢を持っていました。今ではウェストバージニア大学(WVU)の水質研究所の所長として、彼はその夢を実現しつつあります。
ポール・ジェムキェヴィチ博士、ウェストバージニア大学(WVU)の水質研究所の所長
どのようにして酸性鉱山排水を浄化するのか?
WVUの研究員らは博士の指導のもと、酸性鉱山排水から重金属を除去するプロセスを開発しました。このプロセスはウェストバージニア州全域の数百か所のプラントで使用され、流域レベルで水を浄化しています。水がきれいになると水生生物が戻ってくることができます。
しかも状況はより良い方向へ…
研究員らが酸性鉱山排水を浄化する方法についてさらに研究を進める中で、残留している酸性鉱山排水スラッジがレアアース元素(希土類元素)の宝庫だということを発見しました。
レアアース元素に分類される17の金属元素は、スマートフォンなどの現代の多くのハイテクデバイスを生産するのに必要となる重要な材料です。興味深いことにレアアース元素は実際に希少なのではなく、高濃度な状態で見つかることが稀なため、元素を抽出することが難しいということです。ここに、酸性鉱山排水からレアアース元素を抽出する利点があると博士は語ります。
博士は次のように説明します。「酸性鉱山排水は、石炭廃石が風化により硫酸を生じるときに発生します。酸は石炭廃石からあらゆる種類の金属汚染物質を浸出させます。当然、レアアースも浸出させるはずです。母なる自然はこの困難な作業を無償でやってくれます。“幸運なことに、そして事実、酸性鉱山排水にはレアアース元素と重要材料が容易に回収できる形で濃縮されています。何よりもまず、それらの回収には環境基準に合わせた排水の処理が必要になります。きれいな水は私たちの副産物です。」
WVUのレアアース抽出施設は、非常に高濃度のレアアース製品を生産することができます。上記の画像は、87%のレアアース酸化物のサンプルを示します。
この発見により、WVUは米国エネルギー省にアプローチすることができ、レアアース回収プロジェクトを拡大するために500万ドルの資金を確保できました。また、ロックウェル・オートメーションはセンサと制御技術を提供し、レアアース抽出のためのパイロットプラントを開発し、このサステナビリティ(持続可能性)の取り組みのさらなる前進を支援することに同意しました。
今後の展開は?
最初のレアアース元素生産施設の開設は、もうすぐです。これに続き、WVUには酸性鉱山排水からのレアアース元素生産を全米で展開する計画がありますます。ポール・ジェムキェヴィチ博士が取り組んでいるプロジェクトは、エネルギー産業のイメージを一変させ、仕事を創出し、環境を浄化します。ロックウェル・オートメーションは、こうした活動を支援できることを非常に楽しみにしています。
画像はウェストバージニア大学の所有するもので、ウェストバージニア大学より提供を受けています。
公開 2022年9月16日