課題
- 空気圧縮システムのコストが、エンジン工場のエネルギーコストの25%も占めていた。
ソリューション
- CompactLogix PLC - 機器とプログラムを提供し、工場の5台の大型の遠心式エアコンプレッサの効率を向上
- ControlLogix PLC - コンプレッサを負荷分散し、新設のブースタタンクから貯蔵された空気を吸い込むことを実現
- FactoryTalk View SEソフトウェア - プラントの作業員と遠隔地にいるパートナに、ほぼリアルタイムでシステム情報へのアクセスを提供
結果
- エネルギーコストの削減
- より効率的な制御と貯蔵された空気へのアクセスにより、年間でほぼ100万キロワット時、約6万8,000米ドル分ものエネルギー使用を削減できた。
- メンテナンスの改善
- リアルタイムのトレンドデータにより、システムのパフォーマンスを理解でき、トラブルシューティングが容易
- リモートアクセスにより、機械装置メーカ(OEM)は従業員を現場に派遣する必要なく、すぐに問題に対応可能
- リアルタイムのトレンドデータにより、システムのパフォーマンスを理解でき、トラブルシューティングが容易
排出にブレーキをかける
排気ガスの出ない自動車について聞いたことがあると思います。では、排気ガスの出ない自動車の生産についてはどうでしょうか?
これが、世界最大の自動車メーカの1つであるトヨタ自動車株式会社(以下トヨタ)のビジョンです。トヨタ環境チャレンジ2050は、2050年までにグローバル工場でのCO2の排出をゼロにすることを目標としています。
こうした意欲的な目標を達成するために、トヨタはエネルギー使用の削減と再利用可能なエネルギーへの移行の両方に対策を講じています。しかも、同社の米国アラバマ州ハンツビル市にある工場で明らかなように、こうした努力は、トヨタが環境フットプリントを小さくするのに役立つだけでなく、収益増加にも貢献しています。
膨張したエネルギーコスト
ハンツビル工場は、タコマ、タンドラ、ハイランダーのような人気のあるトヨタの車両のエンジンを製造しています。工場の従業員は、他の施設で鋳造されたエンジン部品を受取り、それらをエンジンに加工して組み立て、車両に組み込むために他の施設へ送ります。
工場の空気圧縮システムは、生産工程にとって極めて重要です。主に、5台の大型の遠心式エアコンプレッサで構成されるシステムは、さまざまなマシンプロセス、オートメーション、およびエンジンコンポーネントの乾燥のために、120万平方フィートの工場全体に空気を提供します。
圧縮空気(CA)システムは、本質的にエネルギー集約型です。ハンツビル工場のシステムも例外ではなく、工場の年間のエネルギーコストの25%を占めています。
旧式の制御システムは、必要以上にシステムでエネルギーを消費しました。老朽化した制御システムではコンプレッサの起動に時間がかかり、統合システムとして協調動作できませんでした。しかも、CA貯蔵が十分でなく、空気需要の高ピーク時にCA貯蔵から空気を十分吸い込むことができませんでした。
このような制約があるため、時折発生する短期の需要急増を乗り切るための空気容量を確保するため、1日の大半の間、必要以上にコンプレッサを稼働し続けなければなりませんでした。
トヨタの施設スペシャリストであるEddy Kiggen氏は次のように述べています。「機械を停止しないように稼働させるためには、最低でも81 PSIが必要です。しかし、コンプレッサが起動するのに時間がかかり過ぎるので、CAが81 PSIより下がって低圧で障害を起こすことがないように、91 PSIを維持しなければなりませんでした。」
工場の電気契約はさらに厄介な課題を生み出しました。契約は、電力の使用率が最大の時間帯に消費された電気料金を高くするというものでした。チームメンバーが工場をフル操業で稼働させるために、この時間帯に大型コンプレッサの1台を起動する必要がある場合、たった1台のコンプレッサの起動で、1日の電気料金の100%まで工場の電気料金の請求が増加します。
プラントの一部およびプラント全体のアップグレード
エネルギーコストを抑制し、2050年に向けたエネルギーイニシアチブをサポートするために、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・アラバマ(TMMAL)は、工場のエアコンプレッサ制御システムをアップグレードすることに決めました。
このプロジェクトでは、IZシステムズ社とケース・エンジニアリング社が採用されました。ケース・エンジニアリング社は、ロックウェル・オートメーションのPartnerNetworkプログラムの機械メーカパートナです。同社は、プラントの一部とプラント全体の制御を含む2部構成のソリューションを提供しました。
ケース・エンジニアリング社は、プラントの一部のアップグレードで5台の大型コンプレッサのコントローラを自社のAirLogix制御ソリューションに移行しました。ソリューションはCompactLogix制御プラットフォームをベースにし、各コンプレッサのパフォーマンスと診断データを提供するPanelView Plus 7オペレータインターフェイスを備えています。
プラント全体のアップグレードでは、同社のAirMaster負荷分散ソリューションを使用し、マスタ空気制御システムを構築しました。このソリューションはControlLogixプラットフォームをベースにし、データ収集と可視化にFactoryTalk View SEソフトウェアを使用します。ケース・エンジニアリング社はIZシステムズ社と協業し、IZシステムズ社は5,000ガロンの貯蔵タンクを設置しました。これにより、CAは500 PSIまで増大し、障害を起こさないで時間内のシステムの回復が可能になりました。
調節弁は、空気需要が大きい時間帯に空気を供給します。この貯蔵された空気は、工場の空気需要を満たすために追加の遠心式エアコンプレッサが必要なときに、スムーズに空気を供給します。
削減を加速する
効率の優れた、新たなエアコンプレッサ制御のおかげで、ハンツビル工場はエネルギー使用を年にほぼ100万キロワット時も削減しました。この数字は、ピーク時の使用時間帯での起動を避けることにより実現する削減を含んでいません。
結果として、工場は2年という目標よりも早く、新規制御システムへの投資額を回収できました。
Eddy Kiggen氏は次のように述べています。「システムの設定値を91から85 PSIに減らすことができました。このプロジェクトによるコスト削減の大半はここからきています。」
ローカル制御の更新により、各コンプレッサのスロットルの容量を増加させることで、旧式の制御システムよりも一段と効率的にコンプレッサを稼働することができます。新しいマスタコントローラは圧力とエアフローをモニタし、需要に応じてコンプレッサを起動し、停止します。コンプレッサは稼働を開始する間に、高圧貯蔵タンクからCAを吸い込み、需要の急増を乗り切って、予想される問題からプラントを保護します。
Eddy Kiggen氏は、次のようにも述べています。「今回のアップグレードでの設定により、どんな圧力の低下や、コンプレッサの故障に対しても貯蔵タンクには常に十分な圧力があります。次のコンプレッサの起動に失敗した場合でさえも、もう1台のコンプレッサを起動することができ、プラントフロアの従業員は何が起こったのかにさえ気づきません。」
新しいシステムは、振動を含む各機械の空気圧とエアフロー、エネルギー使用状況と重要なデータをモニタし、トレンド情報を提供します。しかも、この情報がほぼリアルタイムで利用できるので、チームメンバーが以前には利用できなかった重要な情報を使用して、CAシステムを分析し、トラブルシューティングの助けとすることができます。
チームメンバーは、日常のオペレーションモニタの一環として各機械の情報を現場で見ることができます。トヨタとケース・エンジニアリング社は、リモートアクセスを使用してどこからでも情報を確認することができます。
Eddy Kiggen氏はさらに次のように述べています。「空気は電気の次に重要なユーティリィティですので、その状況にはいつも目を光らせています。私は毎日データを見て、どのようにシステムが動作しているかを確認し、その効率性を検討しています。圧力の低下や貯蔵タンクの貯蔵レベルが一定のレベルを下回るというような問題が発生した場合、私にテキストメッセージが届きます。また、ケース・エンジニアリング社につながっているので同社にも問題を通知します。そこでケース・エンジニアリング社はオンラインですぐに問題を解決します。」
トヨタは同様のエネルギー削減のためにこのプロジェクトを別の工場でも展開することを検討し、同時にCO2排出ゼロの方向へ進み続けています。
Eddy Kiggen氏は次のように述べています。「車の製造時におけるCO2排出量ゼロを目指すことは、非常に大きな課題です。再生可能エネルギーに飛びつく前に、今まさに、できるだけ多くのエネルギーを削減しようとしています。この工場での制御のアップグレードは、今までに経験したエネルギープロジェクトの中で最も成功したプロジェクトです。」
上記の結果は、ロックウェル・オートメーションの製品とサービス、および他の製品を採用したトヨタの事例です。他のお客様の場合、具体的な結果が異なることがあります。
商標情報:
CompactLogix、ControlLogix、FactoryTalk、PanelViewおよびPartnerNetworkは、Rockwell Automation Inc.の商標です。
AirMasterは、Case Engineering Inc.の商標です。
公開 2020年3月23日