課題
- SCADAシステムのアップグレードにより、運用データを安全に保存、分析、レポートできる機能を改善する。
ソリューション
- FactoryTalk Historian SEで組織の全レベルからのデータを収集および保存
- FactoryTalk VantagePoint® EMIで運用パフォーマンスに貢献している情報を確認
- FactoryTalk AssetCentreが請負業者の利用とシステム変更を管理し、組織システムへのセキュアなアクセスを提供
結果
- FactoryTalkアーキテクチャにスムーズに移行 - FactoryTalk View SE、FactoryTalk Historian、FactoryTalk Vantage Point、FactoryTalk Asset Centre、FactoryTalk ViewPointなどの製品の設置に成功
- 水規制により効果的に適合 - 生産工程の可視性が強化され、リアルタイムや過去のレポート、分析を入手できるようになった 事前検証済みのデータを収集、保管するため、正確な情報のみがレポートに含まれるようになった。 Webベースのポータルでレポートするため、データのバージョンが1つのみとなった。
- 信頼性の高いデータへのアクセスが向上 - 10年間分の保存データへのアクセスにより、コンプライアンス要件に対応できる 日次、週次、月次など幅広いレポートを提供できる。
- アップグレード済みシステムを操作する際の柔軟性が高まった - タブレットやスマートフォンでシステムを外部から管理できるようになった。
ニュージーランド最長の河川であるワイカト川は、ハミルトン市のすべての給水を担っています。消費者に供給する飲料水に有害生物が混入しておらず、給水基準を満たしていることを確認するために、水の処理および配水、管理はハミルトン市議会が管轄しています。
ハミルトン市の網状の給水設備は、1000kmの配管を通って市内各所に点在する8つの貯水槽に飲料水を供給する1つの水処理プラントから構成され、網状(パイプ状)のネットワークから供給される水がそのまま家庭の水道水として使用されます。毎日、ハミルトン市議会は平均2385杯分の良質な飲料水を5万1000軒を超える家庭および産業用地に途絶えることなく生産しています。
同市議会はまた、ハミルトン唯一の廃水処理施設であるプケテ廃水処理プラント(WWTP)の稼働責任も任されています。このプラントは、ここ数十年間で15万人強の人口を抱える地域へと急速に成長したエリアにサービスを提供しており、同市と同じく、稼働パフォーマンスを向上しながら変化し続ける法規制環境に対応するためにさまざまな開発に取り組み続けています。
ハミルトン市議会がロックウェル・オートメーションのFactoryTalk®統合生産管理およびパフォーマンススイートを活用して実施したのが、プラントの監視制御とデータ収集(SCADA)システムのアップグレードでした。これにより、主要な利害関係者は情報に基づく意思決定を行ないながらパフォーマンスの効率性を高め、法規制の遵守に対応できるようになります。
コンプライアンスおよび生産性の要件事項に対応誰もが利用できる安全な飲料水。これは公衆衛生の根本となる要件です。2008年、ニュージーランド保健省により飲料水基準の改訂が発表されました。この規制に準拠するには、水処理施設は水生産と取水放水のレベルを毎月追跡・保存し、報告する必要があります。
ここで重要なのは、この基準により運用データを10年間保持することが廃水処理プラントに義務付けられたことです。10年以上前、ロックウェル・オートメーションは旧版の監視制御とデータ収集(SCADA)システム向けソフトウェアスイートを同議会に提供していましたが、RSView® 32システムは時間の経過とともに陳腐化が進み効率性が低下したため、ニュージーランド政府が定める今日の規制要件を満たすことが困難になっていました。
従来のSCADAシステムでは、レポート用にMicrosoft® Excel®スプレッドシートに送信するデータを事前に手作業で記録していました。事前に設定したレポートを素早く自動作成し、権限のあるグループと共有するには、短時間で正確に報告できる自動レポートシステムが必要でした。
「従来のシステムは陳腐化しており、ニュージーランドの現行の水規制に準拠するプロセスを簡略化するにはアップグレードは不可欠でした。それだけでなく、生産性の向上とダウンタイムの削減を目標とする制御システムを導入すれば、プラントでの稼働効率を高められる可能性があると思ったんです」と、ハミルトン市議会オートメーション・電気マネージャのゲーリー・ピトケイスリー氏は語ります。
アップグレードの主な目的は、安定した確実な方法でデータを10年間保持できるシステムの配備でした。また同時に、許可された関係者のみがアクセスできるセキュアな環境を維持するだけでなく、従来のオペレーティングシステムよりも高い運用効率を発揮するシステムが必要でした。
このプロセスを改善するにあたり、ハミルトン市議会がサポートを求めたのがロックウェル・オートメーションでした。システムアップグレードの不可欠な要素として、同市議会は最新バージョンのFactoryTalkソフトウェアスイートの導入を依頼しました。ロックウェル・オートメーションの南太平洋地域の産業マネージャを務めるプラサド・ノリは次のように説明します。「FactoryTalk HistorianとFactoryTalk Vantage Pointは、変化し続ける飲料水規格への適合が求められる昨今において、上水道/水処理産業のスタンダードになりつつあります。また通信障害に対応し、コンプライアンスを遵守するために、いくつかの議会はポンプステーションにFactoryTalk Historian MEを採用してデータのローカル保存を実行しています。」
さらに次のように続けます。「FactoryTalkスイートへのアップグレードにより、政府規制の適合に向けた優れたレポート機能、システムの信頼性と安定性の向上、請負業者が施設で変更や再拡張を行なう際のリスクの低減といった主要なメリットが議会によって見出されています。」
FactoryTalkソフトウェアスイートは組織全体での情報のリアルタイム交換を実現します。これは、情報に基づいたビジネス意思決定の向上や応答性、生産性の改善、さらにはコスト削減や規制遵守の容易化を可能にする重要な要素です。
ピトケイスリー氏による施設への導入後、ハミルトン市議会はFactory View (SE)、FactoryTalk Historian、FactoryTalk VantagePoint、FactoryTalk AssetCentre、FactoryTalk ViewPointの各種アプリケーションを含むWWTPシステムのアップグレードを6か月間にわたって実施しました。Historian ClassicからFactoryTalk Historianへの移行をはじめ、アップグレード期間中はロックウェル・オートメーションのカスタマサポートと保守チームが議会にサポートを提供しました。
飲料水基準の準拠に必要な長期のデータ保管とレポート機能は、FactoryTalk HistorianとFactoryTalk VantagePointに搭載されています。データは10年間の規定の保持期間にわたってHistorianサーバに保管され、分析やレポート作成を目的に簡単にアクセスできます。FactoryTalk VantagePointを使用すれば、定期的な水消費量、放水、取水、水質、貯蔵レベルに関する情報を提供する自動生成レポートをスケジュール、作成できます。
FactoryTalk AssetCentreは、請負業者の管理や変更の管理、保存の各機能の改善を実現します。そして何より、このアップグレードによりデータや記録の10年間保持を含むニュージーランドの水規制をプラントで効率的に遵守できるようになりました。
浄水とクリーンな環境の提供
新しいIntegrated Architecture® (統合アーキテクチャ)ソリューションのメリットにより、プラントは今後長い将来にわたってハミルトンの人々に新鮮な飲料水とクリーンな環境を届けることができます。FactoryTalkスイートを導入したおかげで、同議会がアップグレード前に思い描いていたように、履歴データとレポートデータをより迅速かつ正確に使用できるようになったと、ピトケイスリー氏は説明します。
「アップグレードによって、WWTP全体のシステムは以前よりずっと使いやすくなりました。新しいHistorianの優れた機能を活用すれば、データを保存し、重要なレポート作成のために情報を生成するという作業をより効率的に行なえます」と語るピトケイスリー氏。「Vantage Pointソフトウェアのおかげで、水規制への遵守や他のニーズを問わず、自由自在にレポートを生成できるようになりました。これらのレポートはWebベースのレポートとして発行し、許可された人なら誰でも見ることができます。」
アップグレードによるもう1つの特筆すべき成果は、WWTPのシステムを操作する際の柔軟性が高まったことです。「FactoryTalkソフトウェアスイートなら、チームは自分たちの自由な時間にレポートを編集したり更新できます。
データを直接Historianに保存し、PAC (プログラマブル・オートメーション・コントローラ)からヒューマンインターフェイスに直接データを展開することも今では可能です。このデータはスプレッドシートに組み込まれるので、これを基に濁度が規定値に反していないか、塩素濃度が基準値を満たしていないかといった情報を日次、週次、月次ごとに問い合わせることができます」と、ピトケイスリー氏は語ります。
システムユーザの柔軟性が高まれば、タブレット型コンピュータやスマートフォンで離れた場所からでもソフトウェアにアクセスできるようになります。ピトケイスリー氏は次のように締めくくっています。「チームは世界中どこからでもFactoryTalk Viewにアクセスできるタブレットやスマートフォンを持っているんです。このおかげで、オフィス外でもオンコール中でも、システムに簡単にアクセスして重要な変更を行なうことができます。」
FactoryTalkソフトウェアスイートにより、これまでにない運用の可能性がプラントにもたらされました。同議会はこれらの機能を利用し、今後さらにシステムの更新・改善に取り組んでいく予定です。
ここで紹介した成果は、ハミルトン市議会でロックウェル・オートメーション製品およびサービスをその他の製品と併用した結果です。実際の成果は事例ごとに異なる場合があります。
公開 2015年9月25日